ぷろのーと

なにかのプロになりたい人のブログ。

博士課程の就職状況と企業から求められている能力

最近、博士課程(ドクター)の学生を対象にした主に企業への就活セミナーに参加しました。そのセミナーでの内容を整理しました。

博士課程の学生の就職先

博士課程の学生の就職先は多岐に渡りますが、代表的なものは次の通りです。

・企業(大手・中小・ベンチャーなどは様々であり基礎研究・応用研究・製造技術などどこに携わる職につくかも様々)
・官公庁(公務員)
・学校(教員)
・大学・公的研究機関(アカデミア)
・その他、NPO、起業など

様々な職種で博士人材も活躍しています。

企業と大学の研究活動の違いについて

あくまで一般論になるので、企業や研究室によっては当てはまらないケースもあるとは思いますが企業と大学の研究活動の違いというと以下のようなことを挙げられる場合が多いようです。

・企業の方が研究テーマの自由度は低い。
・企業の方が研究費が多い。
・企業の方が研究期間が短く、短期間で成果を求められる。
・企業の方が経験則で研究が進められる
・企業の方が学会発表や論文発表の機会は少ない
・企業の方が特許への申請が多い
・企業の方が労働時間が短い
・企業の方が仕事のうち資料作成や打ち合わせの時間が長くなり、実験時間が短い
・企業の方が測定や作業、実験を自分以外の人や、別の部署や企業に依頼する場合が多い

企業と大学などのアカデミアは一長一短なところがありますが、その中で自分にあった就職先を選ぶ必要があります。

2018年末の社会の動きと企業の動き

2018年末の話なので、社会の動きや企業の動きはもちろん今後も変化していきます。2018年末の就職環境は次のとおりだそうです。

現在の日本社会は、将来的な少子高齢化問題や人口減少問題を抱えている。またグローバル社会、ボーダレス社会といわれるような国際化が進展している。近年は急速なIT技術の発展により高度情報化社会が到来しているといわれている。

これらの社会情勢の中で、企業の動きは次のようになっている。
・高度な技術社会であるため、高度専門人材(博士人材)の適応分野は拡大している。一方で人口減少により対象人材の減少が見込まれることから、海外の人材を積極的に活用しようとする動きもある。
・理系社会の国際化によって、学位もグローバルな価値をもちはじめている。また人材の多様化やダイバーシティなども重要になってきている。
・特にビッグデータ活用や機械学習、AI、IOTなどの情報技術に関わる人材の需要が高まっており、採用に力を入れている企業も多い。

博士課程学生の就職活動について

博士課程の学生の就職活動は次のような状況だそうです。

・定期採用は非常に少ない。企業の部門強化などの戦略のための採用が多い。

・大学と共同研究を行っている企業は博士人材の採用に積極的な場合が多い。
・企業への就職を目指す博士課程の学生は、博士人材を採用している企業は全て受けるくらいの気持ちで臨んだほうがよい。
・日本だけでなく、世界での活躍も視野に入れたほうがよい。
・自分の専攻分野のみに自信があっても、企業には採用されない。コミュニケーション能力や柔軟な対応力も求められる。
・社会のニーズと自分の能力を結びつける必要がある。
・自分の能力を認めてくれる企業を見に行くこともよい。
・学会などで民間企業や公的機関の人との人脈も形成する。
・教授によっては企業との独自のルートを持っている場合もあるので、相談してみる価値はある。
・博士課程の学生の採用は、経団連の指針の対象外であるため、企業は自由な時期に採用を行うことができる。(学部生や修士課程の学生の採用時期よりも早い時期に採用をはじめている企業もある)

企業が博士人材に求めている能力

企業は博士人材に対して、専門性なども求めている一方で、研究や仕事を進めていくうえで基礎、基盤となるような力も求めています。逆にいうと、これらの能力を研究生活で身につけている博士人材は、採用のうえでも強みになるともいえます。

専門力

・専攻分野の学習や研究活動の過程で身につけた深い専門性

基礎的な力

・未解決の問題から短期間で解明可能なテーマを設定する問題設定力
・常識や画期的な成果を疑ってみる批判的思考力
・設定した問題をどのような手段や方法で探求し、解決に導くかを計画、実践するプロジェクトマネージメント能力
・研究内容や成果を論文や資料にまとめる論理的思考力
・研究成果を学会で発表するプレゼンテーション能力

今から研究生活で意識すると変わること

今からの博士過程の研究生活の中でも意識するだけで、変えていけることがあります。ただ、多くの博士過程の学生は、すでにやっていることも多いと思います。

・PDCAサイクル(plan-do-check-action)のような様々な研究や仕事に活用できる基礎的な力を磨く。
日頃の研究活動から仮説立てや条件探し、検証、実験、結果の解析、分析、結果の考察といったサイクルを意識する。
・研究チームや研究室内でのコミュニケーション能力や学生を指導する能力、ホウレンソウといわれる報告・連絡・相談などの仕事を進めるうえで必要になる能力を身につける。
博士課程の学生は指導教官やポスドク(博士研究員)などからは指示をされ、一方で学部生や修士課程の学生には指示や指導を行ったり相談を受ける立場となる場合が多い。企業でいうなれば、上司と部下の間に立つ中間管理職に似た状況になる。上司と部下との調整や連絡、相談、指導などは大変である一方で、仕事を円滑に進める能力を身につける機会にもなる。
・学会などで人脈を作る。
学会や共同研究、懇親会などを活用すると人脈を作る機会はある。まずは、名刺を作成し、相手の名刺をもらうことからはじめるとよい。

 企業に採用された後の話

もし企業に採用されたあとに卒業時期など、なにかしら問題が生じた場合は、早めに企業の担当の方と電話などで連絡を取り合うとよい。意外とこれができない学生も多いそうです。基本的に企業の方は親身に対応してくれるので、迷わずに相談をしましょう。

博士課程に進んだ優秀な人材だからといって、就職状況が甘い環境とはいえません。ただ社会や企業から見て博士人材が以前より認められるようになっているということもあるそうです。博士号取得までで得た能力を活かす場所を見つけていければと思います。